お知らせ
第1回 浜松ICTシンポジウム(2月10日終了)開催概要のご報告*期間限定
2015年3月2日
第1回 浜松ICTシンポジウム 開催報告
Hamamatsu Information and Communication Technology Symposium 2015

NPO法人浜松ソフト産業協会は2015年2月10日に
第1回浜松ICTシンポジウムを開催し、大盛況のうちに閉幕することができました。
本活動に多大なるご支援・ご参加を賜りました皆様に厚く御礼申し上げます。
開催当日の概要をここにご報告申し上げます。
*本報告記事は登壇者の許可を得て開催概略を任意にまとめたものです。全ての文章および写真の複製および二次利用を固く禁じます。
◆開催概要
- 日時:2015年2月10日(木)13時受付開始、13時30分開会(盛況にて終了)
- 会場:ホテルクラウンパレス浜松 芙蓉の間
- 主催:特定非営利活動法人 浜松ソフト産業協会
- テーマ: 「未来価値の創成」 ~未来をもっと身近に、価値あるものに~
主催:NPO法人 浜松ソフト産業協会
協賛:浜松ICTシンポジウム協力会
NTTコミュニケーションズ株式会社 / NTT西日本(西日本電信電話株式会社)/
株式会社河合楽器製作所 / 浜松ホトニクス株式会社 /
ヤマハ発動機株式会社 / ローランド ディー.ジー.株式会社
後援:
浜松市/浜松商工会議所/公益財団法人 浜松地域イノベーション推進機構/国立大学法人 静岡大学/
公立大学法人 静岡文化芸術大学/光産業創成大学院大学/株式会社静岡銀行/浜松信用金庫/
遠州信用金庫/磐田信用金庫/株式会社静岡新聞社・静岡放送株式会社/株式会社中日新聞東海本社/
K-mix(静岡エフエム放送株式会社)/FM Haro!/浜松ケーブルテレビ株式会社
第1部 招待講演
・招待講演1
どう育てるか、遠州のイノベーション・エコシステム
~シリコンバレーからの示唆~
石井 正純 氏(AZCA MD 静岡大学工学部大学院・早稲田大学BS客員教授)
浜松から静岡までの約80kmの距離とほぼ同じ大きさのエリアに世界に冠たるベンチャー企業を多数輩出しているシリコンバレー。その成り立ちを文化的背景、継続させる仕組みを紐解くところから講演は始まった。
まずシリコンバレー特有の環境があげられる。
・多様な文化的背景(人口の36%が外国生まれで50%は家庭で英語以外の言語を話す)
・高い教育レベル(米国トップクラスの大学が集積している)
・ベンチャー育成の豊富な資金源(全米VC投資の約半分がこの地域に投下されている)
しかし初めからそうだった訳ではなく、60年かけて培われてきた文化的背景こそが重要である。すなわち、
・Openness :新しいアイデアや、多様な文化的背景の人たちを受け入れる文化
・Tolerance for Failure(失敗に対する寛容) 1割打者でも大成功。企業家にとって低いリスクである。
これらが人と知恵と技術を呼び、金が集まるという循環を促している。
世界の企業は水平分業とICTを活用することによってさらにスピードを上げて成長している。ただし、シリコンバレーの仕組みをそのまま持ってきても日本では機能しない。日本の場合VCとのほかに行政や商工団体による効果的な支援が不可欠である。さいわい遠州地区には大学も多く大企業や地域連携の仕組みもある。やらまいか精神が外に対するオープンネスと失敗に寛容な精神を併せ持つなら、イノベーション・エコシステムが育つのではないか。
◆質疑応答
短い時間ではあったが、シリコンバレーの成り立ちや浜松における支援組織の役割などについて積極的な質疑応答が交わされた。
・招待講演2
独発、第4次産業革命インダストリー4.0とものづくり日本
川野 俊充 氏(ベッコフオートメーション株式会社 日本法人 代表取締役社長)
ベッコフオートメーションはEtherCAT開発元のPC制御専業メーカであり、創業35年で従業員2700人、世界各国に33支社をもつFAサプライヤである。
まず、Industrie 4.0(注:独スペリング)は独政府が推進する戦略的プロジェクトである。
・スマート工場を標準化して国内展開することで、輸出する製品の付加価値を高める。
・スマート工場の機能を輸出することで製造技術の主導権を握る。
その根底にはアメリカクラウド企業の生産システムへの進出に対する強い危機感があり、「すべてをクラウドが飲み込む」のではなく「機械がICTを活用するべき」という思想が根底にある。それは受注から生産・販売・リサイクルという生産工程の全体最適や、さらにはユーザーからのフィードバックまでをトータルに「繋がる工場」としてカバーし付加価値を上げて行こうとする戦略である。
日本がそこに対峙する際に3つの姿勢が重要なのではないか。「守る」「攻める」「組む」である。
守る :局所最適で生産性を向上させてきた競争力は維持する。ただし現状規格がユニークであるため国内外に分けた製品開発のため重複コストが課題。
攻める:日本発の標準規格を発信する。そのためにはグローバル企業の利害調整が必要。
組む :外側はIndustrie 4.0 に対応し中身は独自仕様で差別化する。
標準化は中小企業にとってはチャンスであり、大手企業とのインターフェースの手段となる。ドイツではI4.0は地方毎のクラスタとして活動されており、海外からの企業誘致を積極的に行っている。遠州地域もそのような取り組みを始めることが出来るのではないか。
◆質疑応答
Industrie 4.0 のようなスマート化、情報化は日本企業でもすでに取り組んでいるのではないかという質問への「確かにそうだが、それを標準化というある意味政治的な取組として発信をすることで注目を集めているという意味もある」答えは、この地域への大きな示唆であったのではないか。
第2部 パネルディスカッション
まず新たに加わるパネリストが自己紹介を兼ねたプレゼンを行った。
・宇佐美 健一 氏(光産業創成大学院大学 特任教授 フォトンリング主宰)
ものづくりだけではなく、資金調達や市場の発掘などをトータルでサポートする仕組み作りに取り組んでいる。
(アラスジャパン合同会社(Aras Japan G.K.)社長 米国 Aras Corporation Vice President 兼任)
オープンソースによるPLMソフトウェアベンダーというARASの事業紹介を行った。
グローバル製造実行システムの構築でできるようになったこととその重要性を強調された。
ここから静岡大学名誉教授 八卷直一 氏 のリードによるパネルディスカッションが行われた。
●インダストリー4.0に関する期待や懐疑について
・シリコンバレーは市場で勝ったものが標準になるという考え方である。
対してインダストリー4.0は部分最適から全体最適へ転換するための、政府主導の長期的な標準化プロジェクトである。
・すべての工場で標準化がなされるわけではないが、特定のアプリケーション、業種で実行されていくだろう。
・標準化と政治的な動きは切り離せないと思うが、オープン化されない標準化になってしまうと成功しないのではないか。
・このような工場で働きたくないという意見も。
●シリコンバレーのエコシステムと対比し浜松に何が必要なのか
・まずその特質は文化的な背景や偶然が重なってできた産物であり、そのまま日本へ移植するのは難しい。
・最低限、政府や自治体・大学の後押しは必要だろう。しかし箱だけ作っても自動的に機能するわけではない。
・どのようなアイデアに将来性があるか、そのような判断が出来る人材のネットワークを持っている大学を活用するべきではないか。
・さらにコンセプトやパテントだけではだめで、経営が出来る人が必要。
・結局は、「アイデア・コンセプト」+「誰がやるか」が重要だろう。
・今回のような交流の場が毎週・毎日のようにコストをかけずに開催され新しいアイデアが生まれている。
しかも垣根を作らず、オープンに開催している。超有名なCEOもそこに参加する。(FB創業者など)
浜松でも毎週シンポジウムをやるべきだ。
●浜松のボトルネックはなにか
・現状に満足しているのではないか。
・変化を歓迎する文化があるかどうか。そこに利益のもとがある。
・本当にオープンな文化、失敗に寛容な土壌があるか。ほんとうに「やらまいか」か
・小さい会社のうちから世界に自分の商品をどう売っていくかを真剣に考えているか。
などなど活発な議論が交わされた。また会場からも積極的な発言がなされ議論が白熱し時間が足りないほどであった
第3部 懇親会・ポスターセッション
また懇親会には講師、パネリストの皆様も参加され、聴講者はそれぞれ興味をもった発言者にたいして質問などを交わした。

感想・意見
シリコンバレーのエコシステムがなぜ機能するのかという講演は示唆に富んでいるという感想が目立った。
また、Industry4.0 に関してはまずはどういうものなのかが理解でき参考になったという声が多かった。
日本では産官学一体になることが重要という受け止め方がされたと感じられる。
またパネルディスカッションに関しては焦点が少しぼやけた印象を与えてしまったことが課題ではあるが、会場とのやり取りが活発になされた。
今後に関しては、地域産業の再生、浜松地域特有の課題にフォーカスしてほしいという要望が多くみられた。また起業やベンチャー支援に関する具体的な事例を知りたいという要望も散見された。
具体的な技術としては、ビッグデータやUx、光産業など現在脚光を浴びいているキーワードが挙った。
浜松に関する議論がもっと行われてほしいという要望もあり、今回で終わらせずに継続した議論の場を提供してほしいという注文・激励もいただいた。
総括
今回は登壇者も多く時間が足りないほどの濃い内容であり、やや消化不良となった面はありましたが、聴講者もそれぞれの立場で活発に議論に参加してくださり、聴講に約170名、懇親会に約100名様のご参加と、活況のうちに全日程を終了することが出来ました。
これも協力会にご参加いただいた法人の皆様、ご後援いただいた法人の皆様、ご登壇いただいた講師・パネリストの皆様のご支援の賜物であります。謹んで御礼申し上げます。
関係者としましては、第1回の成果と反省を踏まえ、当協会の研究活動や地域に、有効な派生を促すとともに、シンポジウムそのものにつきましても一層の充実を図るべく努力して参ります。
引き続き皆様のご支援、ご尽力を賜りますよう、何卒お願い申し上げます。
HSIA 浜松ICTシンポジウム実行委員会 2015年2月吉日